
世界で最も高い教会は『ウルム大会堂』(ミュンスター)といわれる。14世紀着工時にはドム(司教座の置かれた大聖堂)でなくミュンスター(小教区教会、大会堂)で、今もその名で呼ばれる。
その高さは161メートル。垂直性が強調されたゴシックのファサードがロケットのようなタワーを際立たせる。イイね

着工後ファサードは双塔式から単塔式に変更された。設計はウルリヒ・フォン・エンジンゲン。同じ時期に彼はストラスブール大聖堂の未完の双塔に見える単塔も設計している。15世紀マテウス・ベブリンガーの設計に変わり、尖塔が完成したのは(ケルン大聖堂と同じように)19世紀ゴシック・リヴァイバル期になる。
もともとはドイツで多い身廊と側廊が同じ高さの等高式聖堂で計画されたが、これも変更され五廊式の平面構成となる。

塔を上る。普通は広くなった屋上までしか公開されていないが、ウルムはそこから天辺近く(141メートル)までいけた。
最後の40メートルは(地上からはうかがい知れないことだが)すれ違い出来ないほど狭い階段室と外装がお互いにささえ合った二重の鳥篭のようなユニークな空間になっている。

教会前広場には観光案内所などを含む近代的な『ウルム市展示・会議センター』(1993年竣工、設計:リチャード・マイヤー)がある。1986年のコンペで選ばれた提案はミュンスターを誇りとする市民の猛反対を受け、住民投票で反対多数となったが議決を覆す数には至らず実施された。(1990年ウルムでは住民投票により道路建設が差し戻されるドイツでもまれな事件が起きている)
マイヤーらしい白さでフレームとアールを組合せた形状は繊細なゴシックの塔を際立たせ、市民の反対が杞憂だったと感じる。教会左手にある(屋根勾配、色など)教会を倣いながら冴えない別の建物と見比べるのも面白い。

名称 (様式等) :ウルム大会堂 Munster (ゴシック建築)
場所 : ドイツ、ウルム
設計 (竣工年) : ハインリッヒ・パーラー他 Heinrich Palar,Ulrich von Ensingen (1377-1543年)(1844-90年)
訪問日 (評価) : 2004年6月13日 (73点)