
ゴール旧市街から2キロ半。幹線道路に面した『ジェットウイング・ライトハウス』はどこにでもある3階建のホテルに見える。よく見るとプラネタリウムのようなドーム屋根がちょっぴり覗く。
車寄せの受付(支払用)で荷物だけ置くとチェックインは中でと暗い階段へ導かれる。ドームを戴いた重厚な部屋の壁沿いに階段が続き、ブロンズ彫刻の手摺(ラキ・セナナヤケ作、キャンディ朝へのポルトガル侵攻を描いたもの)がスパイラルに飾られ、中世の古城にワープしたようでおよそビーチ・リゾートらしくない。

1階分上がると朝が来たように海に向けてぱっと開けた。ロビーに出ると木枠の大きなガラス窓、その向こうにあるバルコニーへ波が打ち寄せる。
ジェフリー・バワを見るのは5作品目になり、シークエンス変化の切れのよさに驚いていたが、ジェットウイングの受付に至るドラマチックな展開は混乱するほどにしびれた。

地形を活かした設計もまたバワの特徴となる。高低差がある長い回廊を(ビジネスホテルなら一人で部屋に行くところだが)若いボーイに案内されて歩く。「ここはいつできたの?」
「オリジナルは1997年、あなたの部屋は2013年です」バワは2003年に永眠している。「じゃあ設計は誰?」「さぁ」バワが設計したオリジナルが63室(内3室スイート)、新館が22室。案内された部屋は広く(72㎡)、海が見下ろせるバワ風のきれいな部屋で「アップグレードさせて頂きました」と言われ普通だったら文句ない。

さぁ館内見学に繰り出そう。フロントでバワのオリジナルな部屋は?かすかな期待をこめて尋ねると満室だった。
その代わりに1997年竣工の部屋を見せてもらう。白い壁に彫像的な開口があり、その窓には(新館と同じ)エメラルド・グリーンの内開き扉がつく。派手な扉は外からもガラス越しにくっきり見え、ジェットウイング外観の特徴になっている。

回遊性のある廊下をわくわくしながら巡る。デザインは自在に展開し、大部屋の格子天井に描かれた紋章のような絵はお寺の天井画を、矩形の池に瓦屋根の軒が囲んで水面に影を落とす中庭はスペインの宮殿を思わせる。
絵になるデザインはいたるところに散りばめられ、例えばプール脇のバーはカウンター後ろが一面ガラス窓でイイ感じに仕上がっている。プールサイドのパラソルが畳まれると、右手(新館側)の波間に大きな陽がゆっくり落ちた。

夜。レストランは海に面したバルコニーに加えて芝生のテラスにも明りがともされダイニングになった。
海は一点だけ明るい。波打ち際の岩場で食事する一組のカップルが劇の1シーンのように見えた。

名称 (様式等) : ジェットウイング・ライトハウス (現代建築)
場所 : スリランカ、ゴール(旧市街の西)
設計 (竣工年) : ジェフリー・バワ (1997年、増築2013年)
訪問日 (評価) : 2017年4月15日 (83点)(朝食、税・サ込み≒23,000円)