237. 涼し気に / タクツァン僧院 |
朝、折りたたみ傘を持ってぬかるんだ急な道を馬に抜かれながらいく。1時間ほどで中間地点、馬止めでもある『第一展望台』に着いた。深い谷の向こうにあるタクツァン僧院は濃い霧が遮って見えない。
この先で下りに転じ滝を横切って登り返すとヴェールのような霧を通してタクツァン僧院が初めて見える。そこからひと登りで着いた。
タク(虎)ツァン(巣)=『虎の巣』もあるが、狭い岩の隙間に虎はいなかった。携帯・カメラを預けての入場になるから記憶は日々薄れながらバター・ランプ(油壺に挿した芯)に灯るゆらめく火は印象に残る。十分古びて独特の雰囲気を発散するタクツァン僧院は17世紀に作られ1998年火災で全焼、2004年復元されたという。裸火・油が各堂にありスプリンクラーもないのではさもありなんと思った。
岩山に作られた『モンセラット修道院』、波が打ち寄せる断崖に作られた『タナロット寺院』と同じように、人を寄せ付けない場所に涼し気に納まっている建物は、建築単体でなしえないポテンシャルで衝撃を与えてくれる。清々しい気持ちで登山口へ戻った。
場所 : ブータン、パロ郊外
設計 (竣工年) : ? (17世紀、火災焼失後2004年再建)
訪問日 (評価) : 2017年7月10日 (84点)