227. ネロを魅了する / アントワープのノートルダム大寺院 |
銅像の後ろには『アントワープ市庁舎』(設計:コルネリス・フロリス、1565年)が存在感を示す。イタリアで開花したルネサンス様式を北方で初めて展開した名作と言われ(北方ルネサンス)、正面中央の破風を装飾的に立ち上げたストラップワークを特徴に軽やかな面構えで洒落ている。
1521年、皇帝カール5世は南の塔の建設を試みたが火災によって本堂が焼失し塔の施工は中断されたという。123メートルの高い塔は『ストラスブール大聖堂』と同じように非対称ながらアンバランスさより、『大隈講堂』的に涼し気でこれも悪くない。
ルーベンスの傑作と言われる祭壇画が並び、三つ折りになった屏風絵は時代を経た今でも色鮮やか。小説『フランダースの犬』ではノートルダム大寺院の宗教画が主人公ネロを魅了し、絵が落選して落胆したネロはアントワープ市庁舎の階段を落ちた。どちらも英国人作家のフィクションと知って見ても少し感慨を覚える。
場所 : ベルギー、アントワープ
設計 (竣工年) : ? (1521年)
訪問日 (評価) : 2001年10月3日 (60点)