海洋国のイメージが強いオランダだが、ドイツ国境に近い内陸にデ・ホーへ・フェルウェ(De Hoge Veluwe)国立公園があり、そこに世界第二のゴッホ・コレクションで有名な『クローラー・ミューラー美術館』がある。
公園南側ゲートから入場すると、無人の自転車置き場に白塗りされた自転車が並ぶ。好きなものに乗ってクローラー美術館まで10kmほどの道のりをサイクリング開始。オランダの原野にサイクリング・ロードは伸びる。9月、天然のエリカのピンクのいささか地味な花が咲き始めたところだった。
樹林、草原、砂丘。。。転々と移ろう景色を体感しながら、オランダの原風景はこんな具合だったのだろうと思い馳せる。
ところで風光明媚ではない普通の日本の原風景を見せるこんな公園ってあったかな?と思う。田んぼや畑はイメージできてもそれ以前の手付かずの景色になると想像し難い。
1時間ほどゆっくり走って美術館に着いた。レンガ造の重厚な旧館(1938年、ヴァン・デ・ヴェルデ設計)を右手に進むとガラス貼りの水平線が強調された本館がある。黒い鋼材と透明ガラスはミースを思わすが、設計はオランダのヴィム・G・クイスト。ガラスの先の外部空間と一体になった、日本の縁側続きのような開放的な内部スペースが続く。
「アルルの跳ね橋」を始めとしたゴッホ・コレクションもいいが、林で分割された芝生に彫刻がほどよい密度で点在する屋外展示がいい。
著名な彫刻家の作品に混じり、建物が展示される。20世紀初め、抽象表現を目指したデ・スティール(De Stijl)を代表する一人リート・フェルトの作品。家具職人だった彼がデザインした、抽象画家モンドリアンさながらの美しい面と線の構成を持った小品が移築されている。建物が展示されているのが珍しく、その展示品(建物)がこの美術館(ミース調の建物)を想起させるのも面白い。
展示を見終え、駐輪所に戻ると子供の乗ってきた自転車が無い。大人用はたくさん並んでいるのだが。。。勝手に自転車で移動する制度に感心したが、意外な落とし穴があった。次回はチェーン鍵を持参しないと。
名称 (様式等) : クローラー・ミューラー美術館 (現代建築)
場所 : オランダ、ヘルダーラント州エーデ
設計 (竣工年) : ヴィム G.クイスト Wim G.Quist (1977年)
訪問日 (評価) : 2004年9月19日 (83点)