
2015年11月24日、シンガポール国立美術館(National Gallery)がオープンした。2週間入場無料だったのもあって早くも10万人以上の来場者があったと言う。12月10日に訪れると入館料(約2000円)と引換えに嵐のあとのような中で快適に鑑賞できた。
20㍍ほど離れた市庁舎と最高裁判所だった二つの建物をガラスでつなぎ、ブリッジを架けて回遊性のある空間になっている。イイね。ちなみに市役所はなくなり(分散解消)、最高裁は隣の建物(フォスター設計による円盤を乗せたようなビル)に移動した。

地下がコンコースになって、展示空間は地上6階。ギリシア建築風の既存を残す工夫が随所に見られ、日本軍降伏調印、故リー・クアンユー元首相によるマレーシアからの独立宣言(1965年)の舞台となった3~4階にあるホールはきれいに仕上がり、むくの石柱が強烈。図書館やホールといったメジャーな室から、最高裁にあった監獄2室まで展示され、手摺のアイアンワークなどディテールの古さも面白く、経年沈下による最大1.2㍍と言われる段差は(スロープで解消しているが)違和感ない。
大きなガラス屋根が一体感を与え、まるでずっと美術館だったような雰囲気。ガラスで三方向を囲われたかつての外部はいい感じで空間に粗密を与える。

屋上からはマリーナ・ベイ方面の景観が素晴らしい。建物に目を転じると、スカイライトのガラスに常時薄く水が張られている(魚はいない)のに驚かされた。
展示された東南アジアのアートの品数は少なく、由緒あるシンガポールの建物が見事に現代の技術と融合した空間を楽しむのが正しい鑑賞法だろう。シンガポールのポリシーがよくあらわれた美術館である。

名称 (様式等) : シンガポール国立美術館 (グリーク・リヴァイバル+現代建築)
場所 : シンガポール
設計 (竣工年) : カバリエリ・ロドルフォ・ノリ (1929年、1939年)、スタジオ・ミロ、CPG(2015年)
訪問日 (評価) : 2015年12月10日 (80点)